【2020年】国内の電動モビリティ動向

手軽に利用でき、次世代の移動手段として近年注目を集めている電動モビリティ。中でも電動キックボードは、国内でのシェアリングシステムの普及が待たれている電動モビリティのひとつです。

電動キックボードの国内での最新トピックや、今後の展望が気になるところですね。電動モビリティの最新動向について詳しくご紹介します。

国内での電動キックボードの普及状況

日本国内においては、現行の道路交通法の規制によって、電動キックボードは普及しづらいのが現状です。しかし、日本ではすでに電動アシスト自転車が広く普及しているという実績があります。

電動アシスト自転車と比べて、サイズも重量も小さく扱いやすい電動キックボード。そのため、安全性が確認されれば、新しい移動手段として普及が見込めるとの認識がなされています。

しかし広く普及するには、法規制などの課題が残るのが現状で、制度の見直しなどについて、さまざまな議論がなされています。

電動キックボードは公道を走行できないのが現状

電動キックボードは、日本では原動機付自転車と同じ扱いです。つまり公道で利用するには、車体を改造してナンバープレートとウインカーを付ける必要があるということです。また運転するためには運転免許が必要で、ヘルメットの着用も義務付けられています。

手軽な移動手段として諸外国で人気の高い電動キックボード ですが、日本においては法規制によって、気軽に利用できないというのが現状です。そのため国内では、公道を走行できる電動キックボードのシェアリングサービスは、まだ提供されていません。

マイクロモビリティ推進協議会の活動 

国内での電動キックボードの普及を推進するため、電動キックボードの販売メーカーが中心となって設立されたのが「マイクロモビリティ推進協議会」です。「マイクロモビリティ推進協議会」は、電動キックボードによって生活をもっと便利で豊かにするための制度づくりを目指しています。

少子高齢化社会が進む日本において、特に高齢者の移動手段が不十分であることが問題視されています。「マイクロモビリティ推進協議会」では、この問題を解決するために、どのような交通環境であれば電動キックボードが安全に利用できるかや、国内での電動キックボードのシェアリングシステムのサービス展開案などについて協議しています。

電動キックボードシェアリングサービスの実証実験 

日本での電動キックボードの普及を推進するため、電動キックボードシェアリングサービスの実証実験が行われました。実証実験は、公道で実施することはできないため、大学内の一部区域において行われています。

この実証実験は、安全性や利用者のニーズ、適切な制限を提案するための情報収集を目的とした実験です。高齢者や観光客などの利用者が安全に公道を走行するためには、どのような規制を整備する必要があるのかといった知見を得ることを目指して実施されました。

最新!電動キックボードの実証実験とは?

日本での電動キックボードの普及を図ることを目的として、2019年から2020年にかけて、2件の実証実験が行われています。

経済産業省認定案件として実証実験が行われるということは、電動キックボードが導入すべき新技術として注目されているからこそと言えそうですね。実施された電動キックボードの実証実験について、詳しくご紹介します。

規制のサンドボックス制度の活用

電動キックボードの実証実験は「新技術等実証制度」、いわゆる「規制のサンドボックス制度」を活用して行われています。サンドボックスとは砂場のことで、IT用語ではコンピューターの中に安全な仮想環境を構築する技術のことを指します。

「規制のサンドボックス制度」では、場所や期間を限定した上で、できるだけ実際の利用環境に近い状態で新技術の実験を行います。既存の法律などの規制を受けることがない環境で、新技術の利用実験を実施できるのが特徴です。実証実験で得られた結果を活用して、規制革新を推進することを目指しています。

九州大学での実証実験

実施場所:九州大学伊都キャンパス内
実施期間:2019年10月〜2020年4月
実施事業者:株式会社 mobby ride

九州大学伊都キャンパスでの実証実験は、公道にとても近い環境で実施されました。免許不要で、貸し出し返却にはスマホアプリを利用するため、スタッフが立ち会わない完全なセルフサービスです。電動キックボードの最高速度は15km/h以下に設定されました。利用者はアプリで車両の施錠や解錠を行うという、実際のシェアリングサービス提供時と同じような仕組みを利用しての実証実験です。
利用者はまずアプリで利用者登録し、実証実験への参加に同意します。キャンパス内の走行場所に応じて最高速度を設定し、GPSとIoTを活用して制御しています。 安全性やアプリの操作性、遠隔制御の情報などが収集、分析されました。

横浜国立大学での実証実験

実施場所:横浜国立大学常盤台キャンパス内
実施期間:2019年10月〜12月
実施事業者:株式会社 Luup

横浜国立大学常盤台キャンパスでの実証実験は、利用者を18歳以上の大学関係者に限定して実施されました。利用者は専用のアプリを使って貸し出しや返却を実施します。キャンパス内に複数設置されたポートから電動キックボードを取り、目的地のポートに駐車すれば利用終了です。

車体の走行性や安全性、公道に近い環境での利用による情報を収集することを目的に実証実験が行われました。

電動キックボードの実証実験の結果と、今後の動向

2019年から2020年に実施された電動キックボードの実証実験は、今後の国内での電動キックボードの普及に大きな影響をもたらすものとして期待されています。実証実験の結果や利用者の感想、電動キックボードの動向についてみていきましょう。

電動キックボードシェアリング実証実験の結果

電動キックボードシェアリングの実証実験は、大学の構内という私有地内で、通常の公道での走行に極めて近い環境で実施されました。安全性を確保するため、実施業者による保険加入が行われ、走行時にはヘルメットの着用が義務付けられました。利

用者は事前にアプリで走行方法や操作方法の説明を行ったため、スタッフの補助なくスムーズに貸し出しから走行、返却までをセルフで利用できました。

高い安全性に配慮した形で実証実験が運用されたため、結果として実証実験中の事故は0件という結果を達成しています。乗車実績においても国内ではこれまでにない具体的な数値が得られ、公道での実運用に向けて有効な情報を取得できた点が評価されています。

九州大学において行われた実証実験では、以下の数値を達成しています。

総乗車時間:21,363分
総走行距離:2,722km
最大乗車数/日:93回

実証実験においては、GPS制御で走行エリアの制限や走行速度の制限を行っています。GPSやIoTを活用することで、遠隔操作の的確性や、よく利用されたルートや時間帯などの情報も収集しています。

実証実験の利用者の声

電動キックボードの実証実験では、利用者に対してアンケートを実施しています。乗車前後では、電動キックボードの安全性に対する印象が良くなりました。また、今後も継続して利用したいと回答した利用者が95%を超えるなど、日本国内でも電動キックボードシェアリングサービスの実用化を望む声も多かったようです。

電動キックボードの今後の動向に注目

小型モビリティのシェアリング事業は、近年拡大が著しい分野です。自転車のシェアリングサービスはすでに東京都内など一部の地域では浸透しており、今後は電動キックボードも同じようにシェアして利用する方法での事業展開が望まれています。

電動キックボードは、日本の法律では原動機付自転車に分類されるために、現在は規制により公道での走行に課題があるのが現状です。しかし、実施された実証実験の結果などに基づいて、規制の緩和が実現するかもしれません。

市場規模の拡大が見込まれる電動キックボードのシェアリングサービスの、今後の動向に注目が集まりますね。

電動キックボードの今後の展望に期待

電動キックボードは、新しい移動のインフラとして注目を集めています。都市部だけでなく、地方で高齢者の日常の足としての活用や、観光地での利用についても有効性が指摘されています。

電動キックボード をはじめとした電動モビリティの普及を図るため、規制緩和にむけた動きが加速しているのが現状です。電動キックボードが私たちの新しい移動手段として普及する日も近いかもしれません。引き続き、電動キックボードの今後の展望に期待したいですね。

【参考文献】
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https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/191017_kouhyou-3.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/191017_sankou-4.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/191017_kouhyou-2.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/191017_sankou-2.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/regulatorysandbox.html